月平均所定労働時間の計算方法と残業代の「基礎時給」の調べ方
1. まず押さえるべき結論3点
- 所定労働時間とは、会社と労働者の間で約束された「定時(休憩を除く実働時間)」のことである
- 残業代計算でよく聞く「173.8時間」はあくまで一般論(完全週休2日・1日8時間労働)の目安であり、自社の正しい数字を使わないと未払いが発生する
- 自分の正確な所定労働時間は、雇用契約書または就業規則(賃金規程)で必ず確認しなければならない
2. 前提整理:なぜ「所定労働時間」が残業代計算に不可欠なのか?
残業代(時間外割増賃金)は、「1時間あたりの基礎時給 × 割増率 × 残業時間」で計算されます。この基礎時給を割り出すために「1ヶ月の平均所定労働時間」が必要になります。
計算式の「分母」である所定労働時間が小さくなればなるほど、基礎時給は高くなり、結果として残業代も高くなります。
3. 173時間(173.8時間)の算出ロジックと自社の計算方法
ネット上の計算ツールや解説でよく「173時間」が使われる理由と、自社の数字の出し方を解説します。正確な月平均所定労働時間は以下の計算式で導き出されます。
(365日 - 年間休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月
【一般的な「1日8時間・年間休日104日(週休2日目安)」のケース】
(365日 - 104日) × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 174時間
※1年の週数(365÷7=52.14週)×週40時間÷12ヶ月≒173.8時間(174時間)とするのも同じ考え方のアプローチです。
もしあなたの会社の年間休日が120日の場合、(365-120)×8÷12=163.3時間となり、173時間で計算してしまうと基礎時給が本来より低く(不利に)計算されてしまいます。
4. 自社の正しい所定労働時間を調べる3つのステップ
- 労働条件通知書・雇用契約書を確認する
入社時に交付された書類の「勤務時間(始業・終業時刻、休憩時間)」「休日(年間休日数)」の項目を見ます。 - 就業規則・賃金規程を確認する
「割増賃金の計算方法」という項目に、「給与計算の基礎となる月平均所定労働時間は〇〇時間とする」とダイレクトに規定されているケースも多いです。 - シフト制の場合は「特則」を確認する
シフト制や変形労働時間制の場合は、月によって日数が変わるため、「年間を通じた平均時間」を使うのか「その月ごとのシフト上の合計時間」を使うのかが就業規則に定められています。
5. よくある誤解と間違いやすいポイント
- 「所定労働時間=実際に先月働いた時間」という勘違い
「先月は繁忙期で200時間働いたから、分母も200時間かな?」というのは間違いです。所定労働時間はあくまで「定時で労働した(残業ゼロの)場合の時間」という固定の基準値です。 - 「休憩時間を含めて1日9時間」で計算してしまう
「勤務時間 9:00〜18:00(休憩1時間)」の場合、所定労働時間は「8時間」です。9時間で計算すると分母が大きくなり、残業代が不当に安くなってしまいます。 - 「法定労働時間(週40時間)」と同一視している
法定労働時間は労働基準法が定める「上限」であり、所定労働時間は会社が定める「契約時間」です。会社が「1日7時間勤務」と定めていれば、所定労働時間は7時間で計算しなければなりません。
6. 実務チェックリスト
- ✅ 雇用契約書等に「1日の勤務時間」と「年間の休日日数(または完全週休2日等の定め)」が明記されているか。
- ✅ 給与明細の「基礎時給」や「残業代単価」が、自社の正しい「月平均所定労働時間」をもとに計算された適正な金額になっているか。
- ✅ 月給に「残業代計算の基礎から除外される手当(通勤手当や家族手当など)」を含めて(あるいは不当に除外されて)計算されていないか。
自分の「月給(基本給+職務手当等)」を入力して、正しい所定労働時間に基づく残業代の目安を知りたい場合は、残業代計算シミュレーションをご利用ください。
よくある質問 (FAQ)
所定労働時間と法定労働時間の違いは何ですか?
「法定労働時間」は労働基準法が定める労働時間の上限(原則:1日8時間・週40時間)です。「所定労働時間」は、会社と労働者の契約によって定められた個別の勤務時間(例:1日7.5時間)です。残業代の基礎時給は「所定」で計算しますが、割増賃金(1.25倍等)が発生する起点は「法定」を超えるか否かになります。
自分の所定労働時間が分からない場合、とりあえず173時間で計算してもいいですか?
大まかな目安を知る目的であれば173時間(または173.8時間)を使用しても構いません。しかし、年間休日が120日以上の会社などでは本来の所定労働時間は160時間前後になることが多く、173時間で計算すると数万円単位で未払い分の請求額に誤差が生じる可能性があります。
休憩時間は所定労働時間の計算に含めますか?
含めません。所定労働時間は「労働から完全に解放されている休憩時間」を差し引いた、実質的な労働を行う予定の時間を指します。拘束時間が9時間でも、休憩が1時間あれば所定労働時間は8時間です。
シフト制(月によって休日数が違う)の場合、所定労働時間はどうなりますか?
就業規則や賃金規程の定めに従います。「1年間の平均所定労働時間」を固定値として毎月使う会社もあれば、「その月の暦日数に基づく所定時間」を毎月変動させて計算する会社もあります。まずは会社の規程を確認することが先決です。
会社に就業規則や契約書がない場合、どう調べればいいですか?
労働基準法上、労働条件通知書の交付は会社の義務です。もし文書が一切ない場合は、人事労務担当者に直接確認するか、過去の給与明細に印字されている「所定」の欄、もしくは実際の勤務シフトをもとに推計することになります。
関連リンク
8. 出典・参考リンク
最終更新日:2026年2月22日
監修・運営:残業代計算ツール事務局 / fin-calculator.com 編集部
※本コンテンツは各種法令に基づき執筆されていますが、個別の労働トラブルについては労働基準監督署や弁護士等へご相談ください。